独占販売権

*本編は完全なる創作物です。登場人物や地名、組織名などはすべて空想上のものであり、仮に現実に合致するものがあったとしてもそれらとは何ら関係がございません。

 エヌ氏は、デンマークにある自動検査システムメーカーの製品を日本で販売するようにとのジェイ商事のオーナー社長の鶴の一声で募集されて転職してきた画像処理自動検査装置のエキスパートであった。

 エヌ氏のほか、上司のエイ氏と輸入担当部署のビイ氏とともにデンマーク第二の都市オーフス近郊のシステムメーカーを訪問した。エヌ氏はあらかじめビイ氏から「工場見学をする。」とだけの用件を聞いていた。当然社員を雇ったくらいなので販売代理店権を取得済みだとエヌ氏は思っていたし、入社前に件メーカーの資料を和訳させられたりもしていた。しかしビイ氏は先方に訪問することだけを伝えていたらしく先方からすれば用件は特になかったようだ。とりあえず第一回会議ということだろう。お互いに自己紹介をする感じ。午後から訪問して軽く工場見学した後に、会議室でお互いの会社について説明した。会議の最後に先方社長が鋭い質問をぶつけてきた。ジェイ商事の能力を試したのだろう。

 先方社長曰く「日本のような最先端の技術立国にて競合も多いだろうに、あなたたちはわれわれのシステムをどのようにして日本の市場に、どのような計画で販売するのですか。」と。英語がわからないエイ氏は沈黙している。

 輸入担当部署のホープ、ビイ氏は得意げに、用意してきたパワーポイントスライドで、すでに説明した自己紹介会社説明資料を再度説明した。先方社長は少しいら立っているようだ。これ以上ビイ氏にしゃべらせると「もう帰れ。」と、言われかねない。エヌ氏はビイ氏を制して先方社長に説明しだした。

 「貴社のシステムは、懸濁液や乳濁液中の固形異物検査を自動化するものであり、世界中を見てもほかに同様な性能のシステムはございません。世界で唯一の技術です。また世界シェア一位のメーカーの主要検査システムは貴社のものです。この実績は大きな信頼性があります。日本ではそのような製品は日本では生産されていませんが懸濁液製品は多数生産されていて、その日本のメーカーに弊社は販路があり貴社の特長をアピールします。初年度は1セットの受注を目指します。」と、エヌ氏は答えた。すると先方社長は立ち上がってエヌ氏に握手を求めて「ぜひあなたたちに日本で販売してほしい。」と、言って、緊張していたムードが氷解した。

 自動検査システムメーカーを出てオーフス市内のホテルに戻るタクシーの中で、エイ氏とビイ氏はエヌ氏に言った「いやー、エヌさんのおかげで代理店権を獲得できたよ。」

 エヌ氏は思った。「あなたたちは何をしにここまで来たのか?」

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