*本編は完全なる創作物です。登場人物や地名、組織名などはすべて空想上のものであり、仮に現実に合致するものがあったとしてもそれらとは何ら関係がございません。
エヌ氏はジェイ商事に勤めるサラリーマンである。
常にジェイ商事では「新製品」の開発、発掘を奨励されていたため、エヌ氏は自社取り扱い製品の価値を高めるための、ある新製品のアイデアをまとめて上司であるワイ氏に提出することとなった。
エヌ氏は新製品の仕様のほか、実現のための試作やそれにかかる費用と期間、宣伝広告など、平常の営業活動以外にこの新製品だけにかかるであろう費用や期間も想定したうえで、販売計画とともにこれらすべてを事業計画書として作成した。単に販売計画だけでは売り上げや粗利の計画だけにとどまるため、開発される開発費用や宣伝費用など、回収されるべき経費を考慮することが必須だったからである。
新製品は、とある実験装置の経時変化を自動で客観的に記録するものであった。従来方法では記録画像の色味を正しく記録できなかったが、新製品では被写体の色味変化を正しく記録できるという斬新な特長を備えていた。この特長は例えば薄い黄色の被写体が白く記録されるという競合製品の欠点を完全に克服していた。
エヌ氏は上司であるワイ氏にその事業計画書ほか資料を提出し、内容を説明した。
ワイ氏はエヌ氏が提出した資料を一応すべて目を通しエヌ氏からの説明をすべて聞き終えたうえで、ただこう言った。
「エヌ君、営業はねぇ、売ることだけを考えればいいんだよ。経費のことを考えるのは役員がやることであって、君が経費のことを考えるなんておこがましいんだよ。」
