昨日、AIについての講義を受けてきた。
講師はまだ20歳代と思われる企業経営者だった。彼は今回のようなセミナーを各地で実施しており多くの企業や団体でAIについての歴史や現代のトレンド、AI活用の方法と心構えなどを我々にレクチャーした。
彼の講義内容の主メッセージは次の通りだと考えた。
・団体において、業務にAIの活用をするかどうかの判断はトップの意見によって決定される。つまり、業務にAIを導入する会社は気合を入れて導入するし、しない会社は全く導入しない。
・業務でAIを導入する場合の担当者はAIのことを好きにならなくてはトレンドに取り残される。つまりAIの進化は時間に対して指数関数的に発達しているので、がむしゃらに食いついていくしかないがそのためのモチベーションは「AIのことを好きになること。」だという。具体的比喩として、少年時代に夢中になった趣味などを挙げていた。確かに演奏が好きだったら楽器も買うし楽譜も読めるようになるし、ゲーム作りが好きだったら言語も自分で学習する。外国語が好きだったら自分で費用を出して留学したりする。
・AIは飽くまで道具であって、最終決断はAIを活用する者が責任をもって実行すること。当然だと思う。講師は包丁を例に出していた。包丁自体は金属など硬い素材の鋭利な刃物なだけだが、使用者によって武器にも道具にもなる。
私は昔、プログラムを書いて観察動作や測定行動を自動実行するシステムを業務として設計製作販売していた。特に顕微鏡自動化システムは数件の特許化をした。そんな私でさえ、現代のAIの学習は実は苦痛なのである。Geminiにサブスク課金してゴリゴリ使用している感じだが、まだまだのようだ。特に画像や動画生成などでは思うような結果を出すまでに長時間がかかっている。この原因はプロンプトの与え方が十分でないことをすでに理解している。
帰りの列車の中でふと思った。
今回はAI相手の話だったが人相手でも同じなのではないのだろうかと。
他人、つまり自分以外の誰かに私の主張を理解してもらうためには、相手に対して正しい表現が必要であるという当たり前のことを、ふと思ったのである。ここで私が言いたいことは、「AIが人に近づいているのか?」と、いうことだ。
振り返って過去の他人や他社や自分の営業スタイルを考えてみると、多くの場合、最初からスムーズに話が進むことはあまりないように思える。売り手側は自分たちの商品をアピールすることに主眼を置く人が多い。ひどい人になると自社製品パンフレットをお客様の前で広げて選んでもらうようなのもいる。買い手側は自分の要望を最初から表現しきれていない。ここで重要なのは相互に客観的な事象を共有することであるが、そのためには買い手側が自分の要望を客観的に優先順位をつけて売り手側に伝えられるように、売り手側が誘導しなければならない。私がこのことに気づいたのは最初の勤務先で、それ以来私はそれを実行し続けている。
しかしながら、会社は営利団体なので売れなければ利益や収入が得られない。会社によっては売り上げ額と粗利率だけで従業員を評価する会社も存在する。そのような組織の営業担当者は顧客の要望よりも自分の受注を優先するように顧客を誘導する。そして受注した後は連絡がつかなくなる。そしてその営業マンは出禁となるのだ。これは買い手側が営業マン(売り手側)に与えたプロンプトを営業マンが拡大解釈して販売してしまうことが原因である。
次は別の例で、汎用機材を販売している大手メーカーの話だ。
私は検査や測定にかかわる機材の設計製作販売保守業務に長く従事していたのだけれど、決まって出てくる競合は汎用機材を販売している大手メーカーだった。例えばよく遭遇したのは「光学顕微鏡を自動操作して、被写体(観察座標)を連続的に移動させて画像を自動取得し、アーカイブする。」というご要望に対して、「光学顕微鏡、電動ステージ、カメラなどの画像取得装置、画像処理および周辺機器制御ソフトウェア」を販売されるケースが存在した。これら単体では目的を達成できないが、一緒に購入すると達成できるのだと営業マンは言う。購入した人は結局目的を達成できない。なぜか。営業マンが言っていることは間違いではないが、買い手側の目的達成に必須なことを理解していない、もしくは買い手側に十分に伝えていないからである。
では、「買い手側の目的達成に必須なこと」とは何なのか? それは、「各自動操作(各数値などの初期化作業等の実行、光学顕微鏡で観察座標に安全確実に移動し観察目的物に焦点を合致させる、適切な光源、光量、露出、シャッタースピードで撮像、画像に名称を付加してストレージに保存、安全のため必要であればレンズと被写体を遠ざけてから次の観察座標へ移動、繰り返し動作の後終了動作の実行。)の確実性、安全性」であり、これらの手順は自動化装置を設計したものではないと簡単には構築できないのだ。これら手順はプログラムによって記述されるがこれをデバッグする作業も必要。何よりも「それらの動作を確実に実行できることを誰も保証しないこと。(買い手側の自己責任。)」ということだ。
この例は光学解像度が高い高画素数の画像取得装置であり、私は20年以上前の時代にこの原理を採用した自動化システムを10件以上程度販売した。当時も今も顕微鏡の光学解像度は大きく変化していないと思われる(光学解像度はレイリーの式によって決定されるが既に理論的限界に達しつつあったため)が、カメラと画像処理ソフトの性能は圧倒的に向上している。当時のカメラはビデオカメラと言ってNTSCやPALといったアナログ規格信号で画像を伝送し、PC側ではイメージキャプチャーボードという部品でその流れる動画のひとコマを画像として掴み取ってメモリに入れる。PCメモリも数十メガバイトだった。画像取得の際に最重要な条件は光源であり、一定の光源条件で画像取得を実施しなければ比較対象できる画像を取得できない。光源には必要な波長を含む必要があるため、電圧で温度を制御できる黒体輻射(連続スペクトル)光源である白熱球が最も良いが、これは寿命が短く光量が低減していくため現代では連続スペクトル光を発するLED光源(美術館などに納入されているらしい)が市販されていたりする。電動ステージや光学顕微鏡の動作を自動化する装置(動作機械と制御装置)は購入しなければならいだろうけど、画像処理は市販のソフトウェアで十分であろう。その自動化を実行するプログラムはAIに書かせればよい。なんと便利な世の中になったものか!!!(デバッグは依然として人が実施するしかないが近い将来それも自動化できると思う。)
上記の例は、光学顕微鏡の対物レンズが持つ理論限界に近い光学解像度を以て広範囲を網羅する高解像度画像を取得するシステムであった。当時は1視野30万画素(光学解像度1ミクロン以下)で例えば10✕10の合計100視野を走査し、光学解像度1ミクロン以下の広範囲で3000万画素画像を取得できた(47mmおよび55mmフィルター上の物体の粒度分布測定装置も開発した。19mmメンブレンフィルタ上の微生物迅速測定装置は特許化した)。この原理についてお客様だけではなく競合他社や見込み客先や展示会場などにて解説を求められていろんなところでからさんざん講演などしたのだけれど、完全に理解される人は少なかった感じだ。これは公的機関や私企業などに販売されて、ある団体では私が販売したシステムをプロトタイプとして自社製品を作って販売している。
AIの話題から逸れるが上記システムに関した話を続ける。
現代では広範囲高解像度画像を取得するためには、1視野ずつで取得した画像を1枚の大きな画像として張り付けてから、画像処理などして測定操作をするのが良い。(上記システムでは1視野ごとに測定を実行していた。)なぜならば、視野間にまたがって撮像される被測定物体を正確に測定しやすいからである。現在で私が設計するならば間違いなくそうする。しかし20年以上前の時代ではメモリ容量が現代よりも極端に少ないため、1視野ごとに測定を実行せざるをえなかった。しかし複数視野にまたがって撮像される物体も正確に測定できた。そのアルゴリズムは簡単に披露できないので機会があったらまた披露したい。
総括すると、買い手側が売り手側に自分の要望を伝える時、だれが見ても同じ結論が出るような客観的表現をしなければならない(人間がAIに対してうまいプロンプトを与えるかの如く)が、多くの場合はそれが困難である。それを売り手側がうまく引き出せるようにするのが営業マンの力量であると考える。打ち合わせは1回限りにこだわらず、双方が納得いくまで議論を重ねる必要がある。それは対面でもよいしメールや電話でもよい。しかし結果は書面で残すべきであろう。既製品をそのまま販売する場合は見積書などに明細を記述すべきだ。システム構築ならば仕様書作成して相互に承認する必要がある。
